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オンライン型と対面型ファクタリングの本質的な違い——地方中小企業が知るべき選択の基準

「ファクタリングなんて、どうせ最後の手段でしょう」

そんな声を、私は銀行員時代から数え切れないほど聞いてきた。

確かに、かつてのファクタリングは資金繰りに行き詰まった企業の「駆け込み寺」的な存在だった。

しかし、2020年の民法改正以降、この業界は劇的に変化している。

AIを活用したオンライン型ファクタリングの台頭により、従来の対面型サービスとは全く異なる選択肢が生まれているのだ。

私がこの記事で伝えたいのは、「最後の手段」から「前向きな選択肢」への転換だ。

地方の中小企業経営者にとって、オンライン型と対面型の違いを理解することは、もはや資金調達戦略の基本といえるだろう。

本記事では、20年以上の金融実務経験を踏まえ、両者の本質的な違いに迫っていく。

あなたの会社にとって最適な選択ができるよう、実務的な視点から解説したい。

ファクタリングとは何か:基本と進化

ファクタリングの仕組みと利用目的

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、本来の回収期日前に現金化するサービスである。

法的には「債権譲渡契約」に該当し、融資とは根本的に異なる仕組みだ。

売掛金100万円、手数料10万円の場合、90万円が即座に入金されるというのが基本的な流れとなる。

この際重要なのは、これは「借金」ではないということだ。

貸借対照表上の負債には計上されず、売掛債権が現金に変わるだけの取引である。

資金調達手段としての位置づけ

私が銀行員だった頃、中小企業の資金調達といえば銀行融資が9割以上を占めていた。

しかし現在、ファクタリング市場は年間約20%の成長率で拡大している。

特に2024年以降、以下のような変化が顕著に現れている:

  • オンライン型サービスの手数料低下(従来15-20% → 現在2-10%)
  • AI審査による即日対応の実現
  • 個人事業主向けサービスの充実

経済産業省も中小企業の資金調達手段として積極的に推奨しており、もはや「怪しい資金調達」ではない。

法的・会計的な取り扱いの違いにも注意

ファクタリングを利用する際、多くの経営者が戸惑うのが会計処理だ。

売掛金発生時は通常通り「売掛金」で計上するが、ファクタリング契約締結時には「未収入金」に振り替える。

そして入金時には以下の仕訳となる:

  • 借方:普通預金 90万円、売上債権売却損 10万円
  • 貸方:未収入金 100万円

重要なのは、手数料部分(売上債権売却損)は消費税非課税取引という点だ。

また、IFRS適用企業では会計処理が異なる場合があるため、税理士との事前相談が欠かせない。

オンライン型ファクタリングの特徴

サービス概要と提供企業の傾向

オンライン型ファクタリングとは、申込みから契約、入金まで全ての手続きをWeb上で完結できるサービスだ。

代表的な企業として、OLTA、QuQuMo、PAYTODAYなどが挙げられる。

これらの企業に共通するのは、テクノロジーを駆使したコスト削減へのこだわりである。

店舗を持たず、人件費を抑制し、AI審査を導入することで、従来型より大幅に低い手数料を実現している。

申込みに必要な書類も、本人確認書類と売掛金の請求書、銀行口座の入出金履歴程度と最小限だ。

メリット:スピード、手軽さ、非対面の利便性

オンライン型の最大の武器は、圧倒的なスピードである。

最短2時間での入金を謳うサービスも珍しくない。

これは地方企業にとって革命的な変化といえるだろう。

具体的なメリット

  1. 24時間365日申込み可能 – 急な資金需要にも対応
  2. 交通費・移動時間不要 – 地方企業の大きな負担軽減
  3. 手数料の透明性 – 事前にシミュレーション可能
  4. 債権譲渡登記不要のサービス多数 – 取引先に知られるリスク回避

私が最も評価するのは、地方と都市部の格差を埋める効果だ。

従来、地方の中小企業は近隣にファクタリング会社がなく、選択肢が限られていた。

しかしオンライン型なら、東京の優良ファクタリング会社のサービスを地方でも同条件で利用できる。

デメリット:審査精度、信頼感の課題

一方で、オンライン型には看過できない課題もある。

最大の問題は、人的判断が介在しない審査の限界だ。

経営者が不安に感じやすいポイント

  • AI審査では経営者の「熱意」や「将来性」が伝わらない
  • 売掛先の細かな事情を考慮してもらえない
  • トラブル時の対応が機械的になりがち
  • 高額案件では審査が厳しくなる傾向

特に建設業や製造業など、案件ごとの個別事情が複雑な業界では、画一的な審査に限界を感じる場面も多い。

また、初回利用時の不安感は依然として大きく、「本当に大丈夫なのか」という経営者の声をよく聞く。

対面型ファクタリングの特徴

伝統的な形態と信頼関係の重視

対面型ファクタリングは、ファクタリング会社の担当者と直接会って契約を進める従来型のサービスだ。

人と人との信頼関係を基盤とした取引が最大の特徴といえる。

私が銀行員時代に培った経験からいえば、やはり「顔が見える取引」の安心感は格別だ。

担当者が企業を訪問し、実際の事業現場を見て、経営者の人柄を確認した上で審査を行う。

このプロセスには時間がかかるが、その分きめ細かな対応が可能となる。

メリット:担当者との相談、柔軟対応

対面型の真価は、画一的でない、オーダーメイドの対応にある。

  • 複雑な案件でも個別に相談可能
  • 経営者の事業への想いを直接伝えられる
  • 売掛先の特殊事情も考慮してもらえる
  • 継続利用による手数料優遇が期待できる

例えば、ある地方の建設会社では、大型公共工事の受注により一時的に大きな運転資金が必要になった。

オンライン型では機械的に「リスクが高い」と判断されそうな案件だったが、対面型では担当者が現場を確認し、自治体との契約書を精査した結果、favorable conditionsでの買取が実現した。

デメリット:手続きの煩雑さ、時間の制約

しかし対面型にも明確な弱点がある。

時間とコストの負担は、特に地方企業には重い。

  • 面談日程の調整が必要
  • 書類準備に時間がかかる
  • 出張費用が発生する場合がある
  • 審査結果まで数日から1週間程度要する

地方企業との相性の良し悪し

地方企業にとって対面型は一長一短だ。

良い面としては、地域密着型のファクタリング会社なら地元事情を理解している点が挙げられる。

地域の商慣習や取引先企業の信用度について、机上では分からない情報を持っているケースも多い。

一方で、選択肢の少なさは深刻な問題だ。

近隣に対面型ファクタリング会社がない地域では、わざわざ遠方まで出向く必要があり、現実的ではない場合も多い。

比較ポイントと選び方の実務視点

スピード vs 信頼性:どちらが重要か

この選択は、あなたの会社が置かれた状況によって決まる

緊急性が高い場合:オンライン型一択

  • 支払期日が迫っている
  • 突発的な資金需要が発生
  • 金融機関の融資が間に合わない

じっくり検討したい場合:対面型が有利

  • 初回利用で不安が大きい
  • 複雑な案件で個別相談が必要
  • 長期的なパートナーシップを求める

私の経験では、一度オンライン型を利用してファクタリングに慣れた後、必要に応じて対面型も活用するというハイブリッド戦略が最も実用的だ。

コスト構造の違いと「見えにくい手数料」

表面的な手数料だけでは判断してはいけない理由がある。

手数料比較(2社間ファクタリング)

項目オンライン型対面型
基本手数料2-10%8-18%
債権譲渡登記費用不要が多い5-10万円
出張費用なし実費請求の場合あり
事務手数料込み別途の場合あり

しかし、隠れたコストにも注意が必要だ。

オンライン型では審査落ちのリスクが高く、複数社への申込みが必要になる場合がある。

対面型では初回は時間がかかるが、2回目以降はスムーズに進むことが多い。

事例で見る:ある地方企業の判断と結果

実際の事例を紹介しよう(詳細は変更している)。

静岡県の運送会社A社(従業員15名)

燃料費高騰により運転資金が逼迫し、500万円の調達が急務となった。

まず試したのがオンライン型だったが、トラック業界の特殊性を理解してもらえず審査落ち。

その後、地元のファクタリング会社に相談したところ、担当者が実際に営業所を訪問。

燃料カード会社との契約内容や配送ルートを確認した結果、手数料12%で買取が決定した。

A社社長は「最初は手間だと思ったが、業界事情を分かってもらえて本当に助かった」と語っている。

「資金繰りの平常運転化」に向けて考えるべきこと

私が最も伝えたいのは、ファクタリングを「緊急時の対応策」から「平常時の選択肢」に変える発想だ。

そのためには以下の段階的アプローチが有効である:

  1. 小額案件でオンライン型を体験 – システムに慣れる
  2. 高額案件では対面型を検討 – 個別対応のメリット活用
  3. 複数社との関係構築 – 選択肢の多様化
  4. 月次での活用検討 – 売掛金回収サイクルの改善

この戦略により、資金繰りの主導権を自社で握ることができるようになる。

もはや銀行の顔色をうかがいながら融資を待つ必要はない。

売掛金という確実な資産を活用し、能動的な資金管理を実現できるのだ。

まとめ

オンライン型と対面型の本質的な違いの整理

両者の違いを改めて整理すると、以下のようになる:

オンライン型は、テクノロジーの力で効率化を追求したサービスだ。

スピードとコストパフォーマンスに優れ、地方企業のハンディキャップを解消する。

一方で、画一的な審査により個別事情への対応力に限界がある。

対面型は、人間関係を基盤とした従来型のサービスだ。

きめ細かな対応と柔軟性が最大の武器である反面、時間とコストの負担が重い。

どちらが優れているかではなく、使い分けが重要ということを理解していただきたい。

自社の状況に合った選択のために必要な視点

選択の基準として、以下の4つの軸で検討することをお勧めする:

  • 緊急性:即日必要 → オンライン型
  • 金額規模:高額案件 → 対面型検討
  • 案件の複雑さ:標準的 → オンライン型、特殊 → 対面型
  • 継続性:単発 → オンライン型、継続 → 対面型

経営者が「最後の手段」から脱却するために

私が20年以上金融業界を見てきて確信するのは、資金調達の多様化こそが企業の生存戦略だということだ。

ファクタリングは、もはや「恥ずかしい資金調達」ではない。

欧米では売掛債権流動化は極めて一般的な手法であり、日本でもようやくその認識が広がっている。

地方の中小企業経営者には、ぜひ固定観念を捨てて新しい選択肢を検討していただきたい。

あなたの会社の売掛金は、実は「眠っている資産」なのだ。

それを有効活用することで、資金繰りに振り回されない経営を実現できるはずである。

オンライン型と対面型、それぞれの特性を理解し、自社に最適な使い分けを見つけていただければと思う。

必要に応じて専門家への相談も躊躇せず、前向きな資金調達戦略の一環として活用していただきたい。