ファクタリング基礎知識

2社間・3社間ファクタリングの違いと選び方

中小企業の資金繰りは、まさに経営の生命線といえるだろう。

売上は順調でも、売掛金の回収まで1〜2か月待たなければならない。

その間に仕入れ代金や人件費の支払いが迫り、手元資金が底をつく。

こうした「黒字倒産」のリスクは、どの経営者も抱える現実的な課題だ。

そんな中、近年注目を集めているのが「ファクタリング」という資金調達手段である。

しかし、ファクタリングには「2社間」と「3社間」という2つの方式があり、それぞれ全く異なる特徴を持つ。

手数料は2〜3倍も違い、現金化のスピードや売掛先との関係への影響も大きく変わる。

なぜ今、「2社間・3社間ファクタリングの違い」が重要なのか。

それは、単なる資金調達の選択肢を超えて、経営戦略そのものに関わる判断だからだ。

銀行出身ライター・川本修一の視点:「資金繰りの常識を問い直す」

私は三菱銀行で20年以上、中小企業向け融資と与信管理に携わってきた。

2008年のリーマンショック時には、多くの優良企業が資金繰りに窮する現場を目の当たりにした。

その経験から痛感したのは、経営者が「最後の手段」として資金調達を考える構造の危険性である。

ファクタリングは「緊急避難」ではなく、「経営の選択肢」として位置づけるべきだ。

そのためには、2社間と3社間の違いを正しく理解し、自社の状況に応じて最適な選択をする必要がある。

本記事では、銀行員時代の経験と、現在のライター活動で得た現場の声を踏まえ、経営者が本当に知るべきファクタリングの使い分けについて解説する。

ファクタリングとは何か

資金繰りの一手段としての位置づけ

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、支払期日前に現金化する仕組みである。

法的には「債権譲渡契約」に分類され、銀行融資の「金銭消費貸借契約」とは根本的に異なる。

この違いを理解することが、ファクタリングを正しく活用する第一歩といえるだろう。

ファクタリングの基本構造と登場人物

ファクタリング取引には、必ず3つの当事者が存在する。

  • 売掛債権者(利用企業):商品・サービスを提供し、売掛金を持つ企業
  • 売掛先(債務者):商品・サービスを受け取り、支払義務を負う企業
  • ファクタリング会社:売掛債権を買い取り、現金を提供する事業者

重要なのは、ファクタリング会社が審査で重視するのは「売掛先の信用力」だということだ。

利用企業自身の経営状況は、審査にそれほど大きな影響を与えない。

これが銀行融資との最大の違いであり、ファクタリングの特徴を理解する上で欠かせない視点である。

銀行融資との違い:信用とスピードの観点から

私が銀行員時代に行っていた融資審査では、借り手企業の返済能力を徹底的に調査した。

決算書3期分の分析、代表者の個人資産調査、事業計画の妥当性検証。

これらの審査には最低でも2〜3週間、長ければ1か月以上を要する。

一方、ファクタリングの審査対象は売掛先企業の支払能力である。

既に確定している売掛債権を前提とするため、将来の事業計画を詳細に検討する必要がない。

この構造の違いが、ファクタリングの「最短即日現金化」を可能にしている。

ただし、手数料は銀行融資の金利(年1〜3%程度)に比べて割高になる。

これは一時的な資金調達コストと捉え、戦略的に活用することが重要だろう。

2社間ファクタリングの特徴と活用シーン

仕組みと流れ:売掛先に知られない取引

2社間ファクタリングは、利用企業とファクタリング会社のみで完結する取引である。

売掛先企業は一切関与せず、従来通り利用企業に売掛金を支払う。

利用企業は受け取った売掛金を、そのままファクタリング会社に送金する仕組みだ。

具体的な取引の流れ

  1. 申込・審査:利用企業がファクタリング会社に売掛債権の買取を依頼
  2. 契約締結:買取金額と手数料を確定し、債権譲渡契約を締結
  3. 入金:ファクタリング会社から利用企業に買取代金を振込
  4. 売掛金回収:期日到来時、売掛先から利用企業に売掛金が入金
  5. 送金:利用企業からファクタリング会社に売掛金を送金

この流れで重要なのは、売掛先が債権譲渡の事実を知らない点である。

メリット:スピード感と柔軟性

2社間ファクタリングの最大の魅力は、そのスピード感にある。

売掛先への説明や承諾取得が不要なため、申込から入金まで最短即日で完了する。

急な資金需要や支払期限が迫った状況では、この即効性が経営を救うことがある。

また、売掛先との関係に一切影響しない点も大きなメリットだ。

取引先に資金繰りの状況を知られることなく、従来通りのビジネス関係を維持できる。

これは特に、長期的な信頼関係を重視する業界では重要な要素といえるだろう。

デメリット:手数料と信用リスク

2社間ファクタリングの手数料は、売掛債権額の8〜20%が相場とされている。

場合によっては30%近くまで上昇することもあり、資金調達コストとしては決して安くない。

この高い手数料の背景には、ファクタリング会社が抱える複数のリスクがある。

  • 売掛金の使い込みリスク:利用企業が回収した売掛金を別用途に使用する可能性
  • 二重譲渡リスク:同一債権を複数のファクタリング会社に売却する不正行為
  • 架空債権リスク:実在しない売掛債権による詐欺的な取引

これらのリスクを軽減するため、多くのファクタリング会社は「債権譲渡登記」を要求する。

債権譲渡登記は法務局で公開情報となるため、売掛先や取引銀行に知られる可能性がある点は注意が必要だ。

実例:地方製造業が「取引継続」を守るために選んだ道

愛知県の金属加工業A社(従業員15名)の事例を紹介しよう。

同社は自動車部品の下請けとして、大手メーカー向けに月産1000万円規模の加工を行っている。

ある月、主力取引先から「急遽、生産量を倍増できないか」という依頼が舞い込んだ。

受注額は2000万円と魅力的だったが、材料費の先出しが1200万円必要だった。

しかし、既存売掛金の入金は2か月後。

銀行に相談したが、急な設備投資として扱われ、審査に1か月以上かかる見込みだった。

A社社長は「取引先に資金繰りを知られたくない」との強い意向があった。

結果的に2社間ファクタリングを選択し、手数料15%で1000万円を3日で調達。

無事に増産体制を整え、その後の継続受注にもつながった。

「手数料は高かったが、取引先との信頼関係を保ちながらチャンスをつかめた」と社長は振り返る。

3社間ファクタリングの特徴と活用シーン

仕組みと流れ:売掛先を巻き込む透明性

3社間ファクタリングは、利用企業、ファクタリング会社、売掛先の3社が関与する取引である。

最大の特徴は、売掛先に債権譲渡の事実を通知し、承諾を得る点にある。

承諾後は、売掛先が直接ファクタリング会社に売掛金を支払う仕組みだ。

この透明性の高い構造により、ファクタリング会社のリスクが大幅に軽減される。

3社間取引の具体的なプロセス

  1. 事前相談:利用企業が売掛先にファクタリング利用の意向を伝達
  2. 三者協議:利用企業、ファクタリング会社、売掛先で取引条件を確認
  3. 債権譲渡通知:ファクタリング会社から売掛先に正式な譲渡通知を送付
  4. 契約締結:三者間で債権譲渡契約を締結
  5. 代金支払:ファクタリング会社から利用企業に買取代金を入金
  6. 直接回収:期日到来時、売掛先からファクタリング会社に直接入金

メリット:手数料の低さと信用補完

3社間ファクタリングの手数料は、売掛債権額の1〜9%程度と大幅に安い。

2社間ファクタリングと比較すると、2〜3倍のコスト差があることも珍しくない。

この手数料の安さは、ファクタリング会社のリスクが低いことの表れである。

売掛先が直接支払いを行うため、利用企業による使い込みリスクがゼロになる。

また、債権の実在性も売掛先の承諾により確実に担保される。

さらに、3社間取引では債権譲渡登記が不要となるケースが多い。

これにより、登記費用(8〜15万円程度)も節約できる。

デメリット:売掛先への説明・交渉の壁

3社間ファクタリング最大のハードルは、売掛先への説明と承諾取得である。

多くの経営者が「資金繰りが厳しいと思われるのではないか」と懸念する。

実際に、売掛先から以下のような反応を受けることがある。

  • 「支払い先が変わるのは事務手続きが面倒」
  • 「財務状況に問題があるのか」
  • 「今後の取引に影響しないか」

こうした懸念を解消するには、事前の丁寧な説明が不可欠だ。

また、承諾取得から契約締結まで1週間程度の時間を要するため、即日資金調達は困難である。

実例:建設業が「信頼性」を優先した選択

埼玉県の土木工事業B社(従業員30名)の成功事例を見てみよう。

同社は公共工事を中心に、年商3億円規模の事業を展開している。

ある年度末、複数の工事が同時期に完了し、2億円の売掛金が発生した。

しかし、公共工事の支払いは3〜4か月後となるため、次年度の仕入れ資金1億円の調達が課題となった。

B社社長は「公共工事の債権なら売掛先の信用力は抜群。3社間で行けるはず」と判断。

発注元の自治体に説明したところ、「債権譲渡は珍しくない。手続きに協力する」との回答を得た。

結果として、手数料3%で1億円を1週間で調達に成功。

「2社間なら手数料は15%以上だったが、3社間で大幅にコストを抑えられた」

その後も同様の手法で資金調達を行い、安定した事業運営を実現している。

2社間・3社間の比較と選び方

見逃しがちな意思決定のポイント

ファクタリングの方式選択で、多くの経営者が見落としがちなポイントがある。

それは「手数料の差額」を具体的な金額で計算することだ。

例えば、1000万円の売掛債権をファクタリングする場合を考えてみよう。

項目2社間ファクタリング3社間ファクタリング
手数料率15%3%
手数料額150万円30万円
調達額850万円970万円
差額120万円120万円

この120万円という差額は、中小企業にとって決して無視できない金額である。

従業員の給与1〜2か月分、あるいは設備投資の原資にもなりうる。

「売掛先に知られたくない」という理由だけで、120万円を失うべきかどうか。

この視点で検討することが重要だろう。

自社の信用力・売掛先との関係性をどう見るか

ファクタリング方式の選択は、自社と売掛先の関係性を客観視する良い機会でもある。

長年の取引実績があり、相互に信頼関係が構築されている場合、3社間ファクタリングへの理解を得やすい。

一方、新規取引先や競合他社が多い業界では、慎重な判断が求められる。

3社間ファクタリングが適している場合

  • 官公庁・大企業が売掛先:支払能力に問題がなく、債権譲渡にも慣れている
  • 長期継続取引:10年以上の取引実績があり、信頼関係が確立
  • 業界慣行:建設業など、債権譲渡が一般的な業界
  • 大口債権:1000万円以上など、手数料差額が大きい案件

2社間ファクタリングが適している場合

  • 新規・短期取引:関係性が浅く、説明が困難
  • 競合激戦業界:少しでも不安要素を与えたくない状況
  • 緊急資金需要:即日〜3日以内の資金調達が必要
  • 小口債権:数百万円以下で、手数料差額の影響が相対的に小さい

ファクタリング会社の選び方と注意点

ファクタリング業界には、残念ながら悪徳業者も存在する。

金融庁も注意喚起を行っているが、業界に対する法的規制は限定的だ。

そのため、利用企業自身が業者を見極める必要がある。

優良ファクタリング会社の見分け方

  1. 会社情報の透明性
  • 代表者名、所在地、連絡先が明確
  • 設立年数が3年以上
  • ホームページに詳細な会社情報を掲載
  1. 手数料の明確性
  • 事前に手数料率を明示
  • 追加費用の有無を説明
  • 相場から大きく乖離していない
  1. 契約内容の適正性
  • 償還請求権なし(ノンリコース)
  • 過度な担保・保証を要求しない
  • 契約書の内容が理解しやすい

逆に、以下の特徴がある業者は避けるべきだ。

  • 手数料が異常に高い(30%超)または異常に安い(1%未満)
  • 契約を急かし、十分な検討時間を与えない
  • 償還請求権ありの契約(実質的な融資)
  • 担保・保証人を要求する

「最後の手段」にしないための視点

私がファクタリングについて「最後の手段にしない」と考える理由は、そこにある。

経営者が追い詰められた状況で判断すると、悪徳業者に引っかかるリスクが高まる。

また、十分な比較検討なしに割高な条件で契約してしまう可能性もある。

ファクタリングは「経営の選択肢」として、平常時から理解を深めておくべきツールだ。

売掛先との関係性を日頃から良好に保ち、いざという時に3社間ファクタリングの選択肢を持てるようにする。

これも重要な経営戦略の一つといえるだろう。

中小企業経営者の本音:ヒアリングから見えたリアル

資金繰りの現場にある”ためらい”と”焦り”

ライター活動を通じて、100社以上の中小企業経営者にヒアリングを行ってきた。

その中で見えてきたのは、資金調達に対する経営者の複雑な心境である。

「銀行に相談すると格付けが下がるのではないか」

「取引先に弱みを見せたくない」

「手数料が高いのは分かっているが、背に腹は代えられない」

こうした声は、まさに多くの経営者が抱える共通の悩みといえるだろう。

ある製造業の社長は、こう語った。

「ファクタリングの存在は知っていたが、どうしても『高利貸し』のイメージがあった。実際に使ってみると、確かに手数料は高いが、銀行融資では得られないスピード感がある。今では資金繰りの選択肢の一つとして考えている」

ファクタリング導入で変わった経営者の意識

興味深いのは、ファクタリングを一度利用した経営者の意識変化である。

多くの経営者が「思っていたより使いやすかった」と感想を述べる。

その理由を整理すると、以下の3点に集約される。

  1. 審査の簡便性:銀行融資に比べて必要書類が少なく、審査も迅速
  2. 柔軟性:必要な金額だけ、必要な時に利用できる
  3. 透明性:手数料が事前に明確で、隠れたコストがない

ただし、計画的な利用が前提となる。

手数料の高さから、常用すると資金繰りが悪化するリスクがあるためだ。

成功している経営者の共通点

ファクタリングを上手く活用している経営者には、いくつかの共通点がある。

  • 複数社から見積もりを取得:手数料を比較し、最適な条件を選択
  • 売掛先との関係性を重視:可能な限り3社間ファクタリングを選択
  • 利用頻度をコントロール:月1回程度の利用に留め、常用を避ける
  • 出口戦略を明確化:いつまでに通常の資金繰りに戻すかを計画

川本が伝えたいこと:「経営判断」に誇りを持てる選択を

銀行員時代、私は多くの経営者が資金繰りに窮する姿を見てきた。

その多くは、早期の対応策があれば防げたケースだった。

「最後の手段」として慌てて選択するのではなく、「経営判断」として堂々と活用する。

これがファクタリングとの正しい向き合い方だと考える。

そのためには、2社間と3社間の違いを理解し、自社の状況に応じて最適な選択をすることが重要だ。

また、ファクタリング会社との関係も、単なる「金貸し」ではなく「ビジネスパートナー」として捉える視点が必要だろう。

優良なファクタリング会社は、単に資金を提供するだけでなく、売掛金管理のアドバイスや経営相談にも応じてくれる。

こうしたサービスを活用することで、ファクタリングは単なる資金調達手段を超えた価値を提供してくれるはずだ。

まとめ

2社間・3社間の違いとそれぞれの向き不向き

本記事で解説してきた2社間・3社間ファクタリングの違いを、改めて整理しておこう。

2社間ファクタリングは、スピードと秘匿性を重視する場合に適している。

手数料は高いが、売掛先に知られることなく、最短即日で資金調達が可能だ。

新規取引先との関係や、競合激戦業界での利用に向いている。

3社間ファクタリングは、コストを重視し、売掛先との信頼関係がある場合に適している。

手数料は大幅に安いが、売掛先への説明と承諾が必要で、時間もかかる。

官公庁や大企業が売掛先の場合、長期継続取引の場合に向いている。

経営者が押さえるべき「選び方の軸」

ファクタリング方式の選択では、以下の4つの軸で検討することを推奨する。

  1. 緊急性:即日資金調達が必要か、1週間程度の余裕があるか
  2. コスト:手数料の差額が経営に与える影響はどの程度か
  3. 関係性:売掛先との信頼関係はどの程度築けているか
  4. 金額:大口債権か小口債権か、手数料差額の絶対値はいくらか

これらを総合的に判断し、自社にとって最適な選択肢を見つけることが重要だ。

「資金繰りの選択肢」を前向きな武器にするために

最後に、私が最も伝えたいメッセージを述べたい。

ファクタリングは「資金繰りの選択肢」として、前向きに活用すべきツールである。

「最後の手段」として追い詰められてから使うのではなく、「経営戦略」の一環として計画的に活用する。

そのためには、日頃から売掛先との関係を良好に保ち、複数のファクタリング会社の情報を収集しておくことが大切だ。

また、ファクタリングに頼り切るのではなく、銀行融資や内部留保の充実など、多角的な資金調達戦略を構築することも忘れてはならない。

経営者にとって資金繰りは永遠の課題だが、適切な知識と準備があれば、必ず乗り越えられる。

ファクタリングという新しい選択肢を理解し、自信を持って経営判断を行っていただきたい。

それが、中小企業の継続と発展につながると信じている。