三菱銀行時代の20年間で、私は数え切れないほどの中小企業経営者と向き合ってきた。
その中で痛感したのは、多くの経営者が「資金繰り悪化の本質」を見誤っているという現実だった。
「借入で何とかしのげないか」「新規融資は受けられないだろうか」という相談を受けるたび、私はまず一つの質問を投げかけることにしている。
「御社の手元にある資産で、いざというときに現金化できるものは何がありますか?」
この質問に即座に答えられる経営者は、驚くほど少ない。
しかし、資金繰り改善の第一歩は、まさにここから始まるのである。
本記事では、銀行出身ライターとしての実務経験を踏まえ、中小企業が見落としがちな「現金化可能な資産」の見つけ方と活用法について、具体的なアクションプランをお伝えしたい。
資金繰りを見直す前に:現状の把握が第一歩
キャッシュフロー表の作成と確認
資金繰り改善を語る前に、まず自社の現状を正確に把握することが不可欠だ。
私が融資審査を担当していた頃、驚くべきことに「正確なキャッシュフロー表を作成していない」中小企業が大半を占めていた。
これでは、どれだけ優秀な経営者でも適切な判断を下すことは困難である。
キャッシュフロー表は、過去の実績ではなく「将来3ヶ月から6ヶ月の資金の流れ」を予測するツールとして活用すべきだ。
具体的には、月次ベースで以下の項目を整理する必要がある。
- 営業活動によるキャッシュフロー:売上入金、仕入支払い、人件費、その他営業費用
- 投資活動によるキャッシュフロー:設備投資、資産売却収入
- 財務活動によるキャッシュフロー:借入実行、借入返済、利息支払い
この3つの区分で資金の動きを可視化することで、どの分野で資金不足が生じているかが明確になる。
資産・負債の棚卸し
次に重要なのが、バランスシートの「棚卸し」である。
多くの中小企業では、決算書上の資産が実態と乖離しているケースが散見される。
特に注意すべきは以下の項目だ。
流動資産の実態把握
- 現金・預金の実際の残高と拘束状況
- 売掛金の回収可能性と期日管理
- 棚卸資産の流動性と陳腐化リスク
固定資産の活用状況
- 機械設備の稼働率と収益貢献度
- 不動産の事業活用状況と市場価値
- 投資有価証券の時価評価
これらの棚卸しを通じて、帳簿上の資産と実際の「現金化可能性」のギャップを把握することが重要である。
「隠れ資産」と「死蔵資産」の違いを知る
ここで重要な概念が、「隠れ資産」と「死蔵資産」の区別だ。
隠れ資産とは、帳簿価額を上回る実際価値を持つ資産のことを指す。
例えば、取得時期の古い不動産で時価が簿価を大幅に上回っているケースや、のれんや特許権など無形資産で評価されていない価値がこれに該当する。
一方、死蔵資産は、名前の通り事業に活用されず「死んでいる」状態の資産だ。
使われなくなった機械設備、過剰在庫、遊休不動産などがこれに当たる。
隠れ資産は適切な評価により資金調達力の向上につながる一方、死蔵資産は早急な処分により資金化を図るべき対象となる。
この区別を明確にすることが、効果的な資産活用戦略の出発点となるのである。
現金化可能な資産とは何か?
現金化しやすい資産の分類と優先順位
銀行員時代の経験から言えることは、資産の現金化には明確な「優先順位」が存在するということだ。
流動性の観点から、以下のような序列で整理することができる。
- 現金・預金:即座に利用可能な最優先資産
- 売掛金・受取手形:回収期間とリスクを考慮した準流動資産
- 棚卸資産:商品化の程度と市場性による差異が大きい
- 有価証券:市場流通性と価格変動リスクを伴う
- 機械設備・車両:専用性と減価償却の影響を受ける
- 不動産:最も金額が大きいが流動化に時間を要する
この順位付けは、「換金までの所要時間」と「換金時の価値毀損リスク」の2軸で決まってくる。
例えば、上場企業の株式であれば3営業日で現金化できるが、価格変動リスクは高い。
一方、不動産は価値は比較的安定しているものの、売却まで数ヶ月を要するケースが大半だ。
「流動性とは、保有者が大きな価値の損失を被ることなく当該資産を速やかに処分できる度合い」(日本銀行定義)
この定義を踏まえ、自社の資産をこの優先順位に沿って分類し、緊急度に応じた現金化戦略を立てることが重要である。
棚卸資産の再評価:在庫の流動性に注目
中小企業の資金繰り改善において、最も見落とされがちなのが棚卸資産の管理だ。
私が融資先企業を訪問した際、倉庫に眠る大量の在庫を目にすることが少なくなかった。
「いつかは売れる」「処分するのはもったいない」という経営者の心理は理解できるが、在庫は「お金そのもの」ではないということを忘れてはならない。
在庫の流動性評価項目
- 商品別回転率:過去12ヶ月の売上実績による分析
- 陳腐化リスク:技術革新や消費者嗜好の変化への対応力
- 季節性要因:需要の時期的集中による影響度
- 市場性:代替販路や処分市場の存在
特に重要なのは、ABC分析による在庫の重要度分類である。
A:売上高の80%を占める重要商品
B:売上高の15%を占める中程度商品
C:売上高の5%を占める低回転商品
このうち、C分類の商品については積極的な処分を検討すべきだろう。
現金化の手法としては、従業員販売、アウトレット販売、廃棄処分による税務上の損金算入などが考えられる。
売掛金管理の改善:資金回収を早める方法
売掛金は、適切な管理により最も確実に現金化できる資産の一つだ。
しかし、多くの中小企業では「売上計上時点」で安心してしまい、回収管理が疎かになっているケースが散見される。
売掛金の早期現金化手法
① 回収サイトの短縮交渉
既存取引先との支払条件見直しは、最もコストの低い改善手法だ。
月末締め翌月末払いから月末締め当月25日払いへの変更だけで、キャッシュフローは劇的に改善する。
② 早期支払割引制度の導入
支払期日前の入金に対して1-2%の割引を提供する制度だ。
年率換算すると高コストに見えるが、借入金利と比較すれば十分に採算が合うケースが多い。
③ ファクタリングの活用
売掛債権を専門業者に売却する手法で、最短即日での現金化が可能だ。
手数料は2社間取引で10-20%、3社間取引で1-10%程度が相場となっている。
ただし、偽装ファクタリング業者には十分注意を払う必要がある。
金融庁が警告を発している通り、実質的な高金利貸付を行う悪質業者も存在するためだ。
なお、業種によってファクタリングの活用ポイントや注意点が異なる場合もある。
特に建設業の場合は、工期の長さや支払いサイトの特殊性により、一般的なファクタリングとは異なる配慮が必要だ。
株式会社ウェブブランディングが運営する「ファクタリング賛否両論」では、建設業ファクタリング完全ガイド|おすすめ会社10選と手数料・審査のポイントとして、建設業特有の資金繰り課題や適切な業者選択について詳しく解説されている。
建設業に従事される経営者の方には、業界特化の情報として参考になるだろう。
遊休資産の見極め:不要な設備・土地はないか?
製造業やサービス業では、事業拡大時に導入した設備が、その後の事業環境変化により「遊休化」するケースが頻繁に見られる。
これらの遊休資産は、維持費用を発生させる一方で収益には貢献していない「負の資産」となっている可能性が高い。
遊休資産の判定基準
資産種別 | 判定基準 | 処分方法例 |
---|---|---|
機械設備 | 稼働率50%未満が6ヶ月継続 | 中古機械業者、リース会社への売却 |
車両 | 月間走行距離1,000km未満 | 中古車買取業者への売却 |
不動産 | 事業利用面積30%未満 | 売却、リースバック、賃貸転用 |
IT機器 | 使用頻度週1回未満 | 買取業者、従業員販売 |
特に不動産については、「リースバック」という手法が注目されている。
これは資産を売却した後、同じ物件をリース契約で継続利用する方法で、まとまった現金を確保しながら事業継続が可能になる。
ただし、売却価格は市場価格の70-80%程度となり、年間リース料は売却価格の約10%が相場となる点には注意が必要だ。
現場で見た「現金化」成功・失敗のリアル
A社のケース:倉庫に眠っていた不動産が救った資金繰り
地方の建設資材卸売業A社(従業員30名)の事例をご紹介したい。
同社は、大手住宅メーカーとの取引拡大により順調に成長していたが、2020年のコロナ禍で売上が30%減少した。
運転資金の枯渇により、私のもとに緊急融資の相談に来られたのが2020年6月のことだった。
「銀行からの追加融資は厳しいと言われまして…何か良い方法はないでしょうか」
A社の田中社長(仮名)は、疲れ切った表情でそう語った。
まず私が行ったのは、同社の資産状況の詳細な確認だった。
決算書を見ると、確かに売上債権と在庫が売上減少に比例して減っており、現預金も月商の0.5ヶ月分程度しかない。
しかし、固定資産の部に計上されている「土地」の項目が気になった。
「この土地はどちらにあるものですか?」
「ああ、それは10年前に倉庫用地として購入したものですが、結局別の場所に倉庫を建てたので使っていません」
この「使っていない土地」が、A社の資金繰りを救うことになった。
不動産鑑定士による評価を依頼したところ、簿価3,000万円に対して時価は4,500万円。
立地が良く、周辺の宅地開発により地価が上昇していたのだ。
田中社長は当初、「いつか事業拡大で使うかもしれない」と売却を渋っていた。
しかし、私は以下のように説明した。
「今、この土地を現金化することで、当面の資金繰り不安は解消されます。将来事業拡大の際は、その時点での資金調達力を活用すれば良い。大切なのは、今の危機を乗り越えることです」
結果として、A社はこの土地を4,200万円で売却。
税務上の売却益も適切に処理し、当面3年間の運転資金を確保することができた。
田中社長は後にこう振り返っている。
「決算書に載っているからといって、それが本当に事業に必要な資産かどうかは別問題だということがよく分かりました」
B社の失敗:過剰在庫の処分に時間を要した理由
一方で、在庫の現金化に失敗した事例もある。
食品加工業B社(従業員50名)は、大手コンビニエンスストアとの取引において、発注予測を誤り大量の過剰在庫を抱えてしまった。
賞味期限まで残り2ヶ月という冷凍食品が、工場倉庫に月商の3ヶ月分相当積み上がっていた。
「何とか処分して現金化したいのですが…」
B社の佐藤社長(仮名)の相談に対し、私は以下の選択肢を提示した。
- 従業員販売:製造原価の50%で社内販売
- アウトレット販売:直販店舗での30%オフ販売
- 業務用転売:レストランチェーン等への卸売
- 廃棄処分:損金算入による税務メリット活用
しかし、佐藤社長は「元値の30%でも売れば良い方でしょう」という楽観的な見通しを持っていた。
現実は厳しかった。
賞味期限が迫った冷凍食品の引き取り手は限定的で、結果として大部分が廃棄処分となってしまった。
処分費用も含めると、帳簿価額の90%が損失となった。
この失敗の要因は、在庫の現金化には時間的制約があることを軽視したことにある。
賞味期限という絶対的な制約条件下では、理想的な売却価格での処分は困難だった。
「在庫は持っているだけでコストが発生する。早めの損切り判断が重要だった」
佐藤社長のこの言葉は、多くの経営者に共通する教訓といえるだろう。
金融機関はどこを見るのか?融資審査と資産の評価
金融機関の融資審査において、「現金化可能な資産」がどのように評価されるかを理解しておくことは重要だ。
銀行員時代の経験から、審査担当者が注目するポイントをお伝えしたい。
融資審査における資産評価の視点
- 担保価値:市場流通性と価格安定性
- 換金性:緊急時の現金化可能性
- 事業継続性:売却が事業運営に与える影響
- 管理状況:資産の維持管理と有効活用度
特に重要なのは、「この会社は本当に返済できるのか」という視点での評価だ。
帳簿上の資産額ではなく、実際に現金化した場合の回収可能額で判断される。
例えば、専用性の高い製造設備は、帳簿価額が高くても担保価値は限定的だ。
一方、汎用性の高い車両や立地の良い不動産は、帳簿価額を上回る評価を受けることもある。
また、最近では「事業性評価」という手法により、資産の収益貢献度も重視されるようになった。
単純な資産価値だけでなく、その資産が将来的にどれだけのキャッシュフローを生み出すかという観点での評価だ。
このため、現金化可能な資産を整理する際は、金融機関の視点も踏まえた戦略的な検討が必要となる。
現金化の選択肢を広げるために
リースバックや動産担保融資の活用
資産の現金化手法は、単純な売却だけではない。
近年注目されているのが、「リースバック」と「動産担保融資(ABL)」という2つの手法だ。
リースバックの仕組みと活用法
リースバックは、自社の不動産や設備を第三者に売却した後、同じ物件をリース契約で継続利用する方法だ。
この手法の最大のメリットは、まとまった現金を確保しながら事業継続が可能という点にある。
具体的な流れは以下の通りだ。
- 資産評価:不動産鑑定士等による市場価値評価
- 売却交渉:リースバック専門業者との価格交渉
- 売却実行:所有権移転と代金受領(市場価格の70-80%)
- リース契約:同物件の賃貸借契約締結
- 継続利用:月額リース料支払いでの事業継続
年間リース料は売却価格の約10%が相場となるため、実質的な資金コストを慎重に検討する必要がある。
しかし、銀行融資が困難な状況では有効な選択肢となりうる。
動産担保融資(ABL)の可能性
ABL(Asset Based Lending)は、在庫や売掛金、機械設備などの動産を担保とする融資制度だ。
不動産担保に依存しない資金調達手法として、各金融機関が積極的に取り組んでいる。
ABLの対象となる資産
- 商品在庫・原材料在庫
- 売掛金・受取手形
- 機械設備・車両
- 再生可能エネルギー発電設備
従来の不動産担保融資と異なり、事業の実態に即した担保設定が可能になる。
ただし、担保物件の価値評価や動産譲渡登記など、専門的な手続きが必要となる点には注意が必要だ。
ファクタリングの正しい使い方と注意点
ファクタリングは、売掛債権を専門業者に売却して現金化する手法だ。
経済産業省も推奨する正当な資金調達方法だが、利用に際しては十分な注意が必要である。
ファクタリングの基本構造
項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
---|---|---|
契約当事者 | 利用者・ファクタリング会社 | 利用者・ファクタリング会社・売掛先 |
手数料率 | 10-20% | 1-10% |
売掛先への通知 | 不要 | 必要 |
現金化期間 | 最短即日 | 1-2週間 |
回収業務 | 利用者が実施 | ファクタリング会社が実施 |
正しい利用方法
ファクタリングは、以下のような場面で有効活用できる。
- 一時的な資金不足:大口受注に伴う仕入資金不足
- 売掛金の早期回収:キャッシュフロー改善による事業効率向上
- リスク分散:売掛先の倒産リスク回避
注意すべき悪質業者の特徴
金融庁も警告している通り、ファクタリングを装った闇金業者も存在する。
以下の特徴がある業者は避けるべきだ。
- 償還請求権付きの契約(実質的な担保融資)
- 通帳・印鑑・キャッシュカードの預かり要求
- 法外な手数料設定(30%超など)
- 金銭消費貸借契約の併用要求
適切な業者選択と契約内容の十分な確認が、ファクタリング成功の鍵となる。
地方企業こそ知っておきたい資産流動化スキーム
地方中小企業の場合、都市部に比べて資金調達環境が限定的だ。
しかし、地方特有の資産を活用した流動化スキームも存在する。
地方自治体の制度活用
多くの自治体では、中小企業向けの資産流動化支援制度を設けている。
例えば、東京都の「動産・債権担保融資(ABL)制度」では、担保評価費用や保証料の一部補助を受けることができる。
地方においても同様の制度を設ける自治体が増えており、積極的な情報収集が重要だ。
地域金融機関との連携
信用金庫や信用組合などの地域金融機関は、大手都市銀行に比べて柔軟な対応が期待できる。
特に以下の点で優位性がある。
- 地域密着性:地元事情に精通した融資判断
- 小口対応:数百万円単位の小規模融資への積極姿勢
- 長期関係:一時的な業績悪化に対する理解と支援
地方企業の経営者は、メインバンクとしての信用金庫・信用組合との関係構築を重視すべきだろう。
農地・山林等の特殊資産活用
地方企業の中には、本業とは関係のない農地や山林を保有しているケースもある。
これらの資産も、適切な手法により現金化が可能だ。
- 農地売買:農業委員会の許可を得た適法な売買
- 山林売却:立木売買や土地売買による現金化
- 太陽光発電:遊休地への太陽光発電設備設置と売電事業
ただし、これらの特殊資産については、法的制約や市場性の問題があるため、専門家への相談が不可欠である。
まとめ
「現金化できる資産」を持つことの戦略的意味
これまで述べてきた通り、現金化可能な資産を把握し活用することは、単なる緊急時の資金調達手段に留まらない戦略的意味を持つ。
財務戦略としての資産ポートフォリオ
優秀な経営者は、資産を「事業用」と「流動化用」に明確に区分している。
事業に不可欠な資産は確実に保持する一方で、流動化可能な資産を一定割合確保することで、環境変化への対応力を高めているのだ。
この考え方は、個人の資産運用における「流動性リスク管理」と本質的に同じである。
金融機関との関係強化
現金化可能な資産を豊富に持つ企業は、金融機関からの評価も高い。
なぜなら、「万が一の際の回収可能性」が高いと判断されるためだ。
これにより、より良い条件での融資調達が可能になり、平時の財務コストも削減できる。
事業機会への対応力向上
十分な流動性を確保している企業は、突発的な事業機会にも迅速に対応できる。
大口受注、M&A案件、設備投資機会などに対し、資金制約を理由に諦める必要がなくなるのだ。
川本修一が伝えたい:資金繰り改善は”情報と決断”から始まる
私が20年以上の金融機関勤務で学んだ最も重要な教訓は、「情報と決断のスピードが企業の命運を分ける」ということだった。
多くの中小企業経営者は、資金繰りが悪化してから慌てて対策を検討し始める。
しかし、その時点では選択肢が大幅に限られてしまっている。
平時から自社の資産状況を正確に把握し、現金化のシナリオを複数準備しておくことが、真の資金繰り改善につながるのである。
情報収集の重要性
- 自社資産の時価評価を定期的に実施する
- 各種資金調達手法の最新動向を把握する
- 地域の金融機関や支援制度の情報を収集する
- 業界内の成功事例・失敗事例を分析する
決断力の重要性
情報を収集するだけでは意味がない。
適切なタイミングでの決断が、企業の将来を左右する。
「もったいない」「いつか使うかもしれない」という感情的判断ではなく、定量的な分析に基づく合理的決断が求められる。
特に地方中小企業の経営者には、「完璧を期すより、8割の確信で決断する勇気」を持っていただきたい。
明日から実行できる小さな第一歩とは
最後に、本記事を読んでいただいた経営者の皆様に、明日から実行できる具体的なアクションプランをお示ししたい。
第1週目:現状把握
- 資産リストの作成:決算書の資産項目を実態ベースで再整理
- キャッシュフロー表の更新:向こう6ヶ月の資金繰り予測
- 遊休資産の洗い出し:使用頻度の低い資産の特定
第2週目:評価・分析
- 優先順位付け:流動性の高い順での資産ランキング
- 市場価値調査:主要資産の時価評価(簡易版)
- 処分影響分析:売却が事業に与える影響度評価
第3週目:選択肢検討
- 金融機関相談:メインバンクとの現状共有
- 専門業者調査:ファクタリング・リースバック業者の比較
- 制度調査:地方自治体の支援制度確認
第4週目:実行準備
- 優先案件選定:最も効果的な現金化案件の決定
- 実行計画策定:具体的なスケジュールと責任者の明確化
- リスク対策:想定されるリスクと対応策の準備
このスケジュールに沿って行動することで、1ヶ月後には確実に資金繰り改善の道筋が見えてくるはずだ。
資金繰りは経営の根幹である。
適切な資産管理と流動化戦略により、環境変化に負けない強靭な財務体質を構築していただきたい。
それが、地方中小企業の持続的成長への第一歩となるのである。